ここではケヴィンが昨今話題の環境問題について、かなり辛辣な意見を述べています。先日発刊された雑誌「TONE」では、その表現はかなり抑えめに翻訳されていましたが、実際はもっと凄い。でも彼の言っていることは個人的にはほぼ同意します。
最後は“Glider”という曲名の由来について。イアンの深読みをあっさりとかわすケヴィンが素敵です(笑)。
ではお楽しみ下さい。
ーーマイ・ブラッディ・ヴァレンタインがアメリカをツアーしたとき、その馬鹿でかいサウンドが何と言っても印象的だった。当時のインタビューでも君はそのことについて述べているよね。「テクノやレイヴの爆音に比べれば、自分たちの音楽は耳に優しいものだ」って。
「うん。確かに僕らのサウンドはラウドだったし、実際アメリカのツアーでは最もパワフルなPAを使ってライヴをやっていた。人々からは『君のライヴのせいで耳から血が出た』とか『難聴になった』とか言われたものだよ。でも120dbものサウンドを流しているクラブなんかの方が、僕らの演奏よりも遥かに爆音だと思う。単にディストーションがかかっているか、かかっていないかだけの違いじゃないかな」
ーーああ、なるほどね。それは面白いね。いわゆる映像のトリックと一緒で、単にカラーの違いなのかもね。
「うん。それに僕は一時期いつもデシベル・メーターを持ち歩いていたから分かるんだけど、他のバンドがバーとかでプレイしている音量と、僕らのサウンドの音量は大して変わらない。誰の耳も傷つけなかったと思うよ」
ーーストリート・ノイズともさして変わらないかもね。ところで人々は「ブリティッシュ・インヴェイジョン」とか「レヴォリューション・ロック」なんて用語を好んで使うけど、非常に影響力のある君たちの音楽を言葉で表すとしたら、「インヴェイジョン(侵略)」と「レヴォリューション(革命)」、どちらの方が相応しいと思う?
「インヴェイジョン、かな(笑)。僕らのサウンドは人々の何かに侵入したと思う。‥‥(煙草をくゆらせながら)でもどうだろう、分かんないな。もはやレヴォリューション(革命)という言葉の意味もよく分からないしね」
ーーそう?
「うん。革命なんて妙な言葉だよ。つまり革命と言うのは、同じような考えを持った人々の中から新たな思想として求められるわけだろ。でも革命を成し遂げるためには、人々はその思想へ向かって1つに結束していかなければならないわけだし、そうすると人間の基本的なニーズや欲求はないがしろにされてしまうわけだからさ。いずれにしても革命なんて、今となっては新たなアイディアの1つでしかないと思う」
ーー13th・フロア・エレヴェーターズとか、イエロー・サブマリンとか、ミステリー・トレイン(エルヴィス・プレスリーの曲名)とか、ハリケーン・ファイター・プレーン(レッド・クレイヨラの曲名)とか、ロックンロールには乗り物を題材にしたバンド名や曲名が数多く存在するよね。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの乗り物は“グライダー”なわけだけど。
「(困ったように笑う)」
ーーどうして? グライダーってエコ・フレンドリーな乗り物だけど。
「あーエコ・フレンドリーなんて信用してないよ」
ーー本当に? なんで? 詐欺だと思うから?
「うん」
ーー本当?
「うん。正直、僕ら人間は出来る限り地球を汚染しまくって温めてやれば良いんだよ」
ーーマジで?
「確かに地球温暖化は僕らにとって深刻な問題だし、50年後のことを考えると恐ろしいけどさ、問題は太陽系規模で起きていることなんだから何やったって無意味なんだよ」
ーー太陽の問題だと。
「そう。今までだっそうだし、これからだってどんどん熱くなっていく一方なんだから。だいだいカーボン・ニュートラル(何かを生産したり、一連の人為的活動を行った際に、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量である、という概念)そのものが詐欺。システムが根本的に間違っているんだからどうしようもないよ。人々が今やっていることをちょっとずつ変えたってそんなものは時間の無駄。そう言う意味ではエコ・フレンドリーなんて詐欺なんだって」
ーーうーん、面白い考えだし、ある意味では正しいのかもね。(ケヴィンの話を遮って熱弁を振るう)バイオエタノールだとか、そういう食料を燃料に使う解決案のことをカストロは「国際的な大量虐殺」と呼んでいるよね。何故なら先進国が貧しい国から大量の食料を奪い、そこに飢餓が生まれるわけだから。
「重要なのは、自動車産業と言うのは電気と燃料と、あとちょっとしたものだけで簡単に成り立っているということだね。彼らは数年前に1ガロンあたり200マイル進む車を開発したけど、そんなものは道中で走っていやしない。全ての産業は愚かだよ」
ーー愚かな産業。資本主義そのものが問題だし、悪を恒久化させているんだ。
「そう。今の世の中は、問題の本質を顧みることの出来ないようなたった2〜3千人の社会病質者によって動かされている。それって気違いじみているよ」
ーー本当だ狂ってる。
「そういうこと」
ーー問題は、頭のおかしな連中が、朝起きる方法やネクタイの締め方、スーツの着方、会社へ出社する方法を知っているということなんだな。そういう連中のことを‥‥
「社会病質者って言うんだ」
ーーああ。そういえば前に君は精神的におかしくなった時期があると言っていたけど‥‥
「(肩をすくめて何か言いかける)」
ーーそれってすごく興味深いなと思ってて。だって、ディック・チェイニーみたいな社会病質者がマトモな人間とされている世の中じゃ、一体何が正常で何が異常なのか。
「ああ、それは単純なこと。もし12歳の子供たちが世界を動かしているとしたら、彼らのことをみんな悪だと思うかい? 言ってる意味分かる?」
ーーうん。
「思わないだろ? 彼らを悪だと思う方が馬鹿げていることになるはずさ」
ーーそうだね。ところで“Glider”についてまだ答えてもらってなかった。
「ああ、あれはただの曲名だよ。そういえば、つい最近僕らが初めてレコーディングしたときのトラック・シートを見付けたんだ。そこには“glide guitar”というトラックがあって、その名前を決めるためにみんなで話し合ったのを思い出したよ。ほら、全てのトラックには何かしらの名称を付けておくものだろ?」
ーーああ、なるほど。
「そのギターは(擬音とジェスチャーを交えながら)“ウィ〜ンウィ〜ン”って、まるでグライダーがエアポケットの中に入り込んだような音のイメージだったんだ。ふわふわと揺れているような‥‥」
ーーなるほど。
「(肩をすくめて)そっから取ったというわけ」
ーー(笑)。それが聞きたかったんだ。今日はどうもありがとう。
「どういたしまして」
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